食べ物がおいしそうな小説

私のお気に入りの小説家さんのなかに、食べ物をすごくおいしそうに描写する人がいます。食べ物がメインテーマなわけではなく、メインのストーリーは全然別にあるのですが、さり気ない食卓のシーンとか、すごくおいしそうなんです。でも、小説で食べ物をおいしそうに表現するって、すごい描写力だなと思います。漫画や、アニメや、ドラマや、映画や、視覚情報がともなうものであれば、もう少し表現の幅が広がると思うのですが、文章だけで、読者の想像力のなかにおいしそうを作るというのは、なかなかできないんじゃないかと思います。その小説家さんが描くのは、決してグルメや特別な食べ物ではなくて、本当に、家庭の料理だったり、商店街で買ったお菓子だったりするんですが、読んでいると思わずお腹が空くというか、同じ物を買いに行ったり、作りたくなったりします。文章が凝っているわけでもなく、何でかなあと思っていたのですが、その食べ物が出てくる場面と、登場人物の心情やら状況やらが、一番印象的にしっくりくる組み合わせなのかもしれません。食べ物って記憶に残りやすいので、違う人に同じ食事の場面で感想を聞いてみたら、同じ印象的でも、抱く感触は違ってくるのかもしれません。